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福岡伸一 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2013年12月29日

表紙画像

(1)宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論(青木薫著、講談社現代新書・798円)
(2)今を生きるための現代詩(渡邊十絲子著、講談社現代新書・798円)
(3)もういちどつくりたい テレビドキュメンタリスト・木村栄文(渡辺考著、講談社・1890円)
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 (1)は、科学書翻訳の名手による今年出色の科学論。神を否定して宇宙の大原則を究明しようとすればするほど、危ういまでに神に接近してしまうという現代科学の最先端のざわめきを活写。我々は宇宙の果てを見ているようで、実は自分の内部を覗(のぞ)いているのかもしれない。(2)は、詩人による繊細な言葉論・日本語論。中国の辺境で体験した寄辺(よるべ)なき孤独を手がかりに、川田絢音(あやね)の詩を論じる。わが身にぴたりと添い、そのかたちを守るやさしい衣類としての母語。ざらついた外国語。異国で生活すると言葉と自己のあいだを考えずにはいられなくなる。(3)は、テレビマンによる異色のテレビマン伝。客観的に世界を記述できない以上、開き直って主観的ルポに徹する。おもしろうてやがて悲しき。
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 福岡伸一(ニューヨークに研究留学中。対談集『動的平衡ダイアローグ』、『ドリトル先生航海記』新訳を出版予定。)

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