1. HOME
  2. 書評
  3. 「父の戒名をつけてみました」書評 周辺事情もぬかりなく調査を

「父の戒名をつけてみました」書評 周辺事情もぬかりなく調査を

評者: 内澤旬子 / 朝⽇新聞掲載:2014年02月16日
父の戒名をつけてみました 著者:朝山 実 出版社:中央公論新社 ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784120045639
発売⽇:
サイズ: 20cm/236p

父の戒名をつけてみました [著]朝山実

 現代の日本人はどう葬送されるのがいいのか。熱心な仏教徒である場合を除き、多くの人がお寺に払う葬儀費用を「妥当」とは思っていない。かといってその場で強く主張できるほどの知識も興味もないし、揉(も)め事は避けたい。心の底では納得しないまま、葬儀社や檀那寺(だんなでら)にいわれるままに段取りを決め、支払う。周囲でもよく聞く話だ。
 島田裕巳『戒名は、自分で決める』を読んだ著者は、父親の死に際して自分で戒名をつけると檀那寺の住職に宣言。住職は激怒。揉め事は葬儀だけでなく法事や墓地に広がり、さらに親族間の遺産相続問題まで勃発する。
 著者の体験以外に、後半には葬儀関係者や戸籍名を戒名にした体験者などを取材。
 一番意外だったのは、戒名料の相場が宗派によって、違うこと。一般人がつけることに寛大な宗派もある。戒名を自分でつけたいならば、本人の意向だけでなく周辺事情もぬかりなく調査した上で、決行すべしということか。
    ◇
 中央公論新社・1575円