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チャイナズ・スーパーバンク——中国を動かす謎の巨大銀行 [著]H・サンダースン、M・フォーサイス

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2014年06月01日

[ジャンル]経済 社会

表紙画像

■先兵役からみる国と金融の蜜月

 国家の腕力と、その危うさが曇りガラスの向こうで絡みあう中国経済は、どこから見るかで風景が変わる。
 本書が焦点をあてたのは、中国の国家開発銀行。国内からアフリカ、中南米まで広がる貸出残高が、日本円にして100兆円を超える「怪物」国策銀行だ。主役は、昨春まで15年間、総裁を務めた陳元。毛沢東とともに建国に携わった「八大元老」のひとり、陳雲の息子である。
 著者の米メディアの北京特派員ふたりと同様、現地で取材をしていた私は、この設定でまず、読みたくなった。共産党が率いる「中国株式会社」の姿が、経済のみならず、歴史や政治を含めて見渡せると思ったからだ。
 中国は世界第2の経済大国となったいまも、経済の命脈である金融を国家が牛耳る。マネーの勢いを外交にも存分に活用する。その実情を「国家資本主義」という言葉で丸めず、先兵役を担う中国開銀の動きを通じて描いている。
 国家の信用を背景に低い金利で調達したお金を、地方政府がつくった金融会社や中国企業に回す。道路や港、工場用地を整備し、戦略産業を育てる。赤字の太陽光メーカーにも巨額の融資枠を与え、国際競争を後押しする。担保の土地は、バブルで急騰していた。それに、国家が破綻(はたん)しない限り、お金は無限にある。
 途上国に貸したお金は、現場で事業を請け負う自国企業への支払いで還流させる。資源国なら、返済は石油や鉱物で受け取る。総裁の陳は、ベネズエラの反米だった故・チャベス大統領や、エチオピアで強権のもと成長を目指した故・メレス首相ともわたりあう。国家首脳のごとく。
 肝心なことを書いていない決算書を読みこみ、広報窓口もない同行の職員や取引先を追いかける。アフリカにも足を運んだ労作。成長が鈍り始めた中国で、権力とカネの蜜月はいつまで続くのか。第2幕の予習にも役立ちそうだ。
    ◇
 築地正登訳、原書房・3024円/2013年の原著刊行当時は著者は2人ともブルームバーグ・ニュースの記者。


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