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生きづらさの自己表現 アートによってよみがえる「生」 [著]藤澤三佳

[評者]

[掲載]2014年06月08日

[ジャンル]人文

表紙画像

 統合失調症、強迫神経症、親の虐待による社会不安障害……生きにくい事情を抱えた人が絵画や映像を制作することで生きる意欲を取り戻していくさまを、多くの図版とともにたどる。露頭する葛藤、傷の奥の肉質部。だが、生きるために描き始めた人は苦しみが癒えるとふっと描かなくなる。離婚後に自死した元妻を「唯一の存在」として描き続けた楠登は「死んだ命が光の粒子になる」絵を描き終えたのち、作品を燃やしてしまう。摂食障害の自分を主題にした絵で知られる木村千穂も「自分の気持ちが言えるようになり、拒食や過食がなくなると、描けなくなって」。表現とは、芸術とは何なのか。見る側もまた自らの深奥を問い、揺れ動く。
    ◇
(晃洋書房・2376円)


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