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100%再生可能へ!——ドイツの市民エネルギー企業 [著]村上敦池・田憲昭・滝川薫

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2014年08月17日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■「無数の小さな主体」が変革担う

 ドイツでは、2013年に総電力消費量のうち、太陽光や風力などの再生可能エネルギー比率が何と、25%を超えた。これは、日本がモデルとした再エネ固定価格買い取り制度が顕著な成功を収めた証しだ。しかし、その成功要因は何か、誰がどのように再エネ拡大を担ったのか、といった点については意外に知られていない。ドイツ・スイス在住の3名の日本人ジャーナリストによる本書は、現地での豊富な調査に基づいて、再エネに取り組む人々を生き生きと描くとともに、その成功を支える組織、制度、そして政策理念を説得的に提示した良書だ。
 本書で特に蒙(もう)を啓(ひら)かれるのは、次の3点である。第一に、再エネの飛躍的拡大を担ったのは大電力会社ではなく、市民、農家、中小企業、自治体エネルギー公社など「無数の小さな主体」だった。第二に、彼らが再エネ事業に参加するために、「市民エネルギー会社」、「エネルギー協同組合」など様々な組織形態が工夫されたほか、「自治体エネルギー公社」も強力に再エネを推進した。そして第三に、こうした再エネ拡大は、「地域を潤す」ことが明らかになった。再エネ事業を地域から自力で立ち上げれば、売電収入、雇用所得、税収が地域に還元される。さらに、化石燃料を地産の再エネで代替すれば、燃料費節約で実質所得増が生み出される。
 それにしても深く印象づけられるのは、反原発運動を担ってきたドイツ市民が、反対運動に留(とど)まらず、再エネ事業という未来を切り開く建設事業に乗り出し、社会を後戻り不能な地点まで変革してきたその粘り強さである。とはいえ日本でも、そうした変革はすでに始まっている。その点では、和田武ほか著『市民・地域共同発電所のつくり方』(かもがわ出版)、および環境エネルギー政策研究所編著『地域の資源を活かす再生可能エネルギー事業』(金融財政事情研究会)の併読をお奨(すす)めしたい。
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 学芸出版社・2376円/むらかみ・あつし、いけだ・のりあき、たきがわ・かおり

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