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検証―長篠合戦 [著]平山優

[評者]本郷和人(東京大学教授・日本中世史)

[掲載]2014年09月28日

[ジャンル]歴史

表紙画像

■フェアに、冷静に、実証的に

 天正3(1575)年5月、織田信長・徳川家康軍と武田勝頼軍は、設楽原(したらがはら)(愛知県新城市)で決戦した。信長は鉄砲3000丁を用意、「三段撃ち」により戦国最強の武田騎馬隊に完勝した、という。だが近年は研究が進み、「三段撃ち」は虚構、そもそも馬に乗ったまま戦う部隊はない、など異論が出されている。
 本書はまず「利用できる歴史資料は何か」を考察した上でそれを縦横に駆使し、先の疑問を含む様々な論点に答えていく。織田軍と武田軍の属性に根本的な差異はない、信長は大量の鉄砲を集中的に活用した、武田軍の騎馬突撃は史実である等々、長篠の戦いの実像が復元されていく。
 本書は実にフェアである。戦国時代の合戦本は、読み手にも書き手にも人気が高いだけに、叙述が熱を帯びすぎるきらいがある。それに対して本書はきわめて冷静に、意見を異にする立場への敬意も忘れることなく、実証的に叙述される。私も歴史研究者だが、歴史研究書はかくありたい。
     ◇
 吉川弘文館・1944円

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