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海賊たちの黄金時代 [著]マーカス・レディカー、海賊と資本主義 [著]ロドルフ・デュランほか

[評者]水野和夫(日本大学教授・経済学)

[掲載]2014年10月19日

[ジャンル]社会

表紙画像

■時代の先を進んだ荒くれたち

 『海賊たちの黄金時代』は生きるために海賊にならざるを得なかった最下層の人々が、資本主義社会への移行期において自らの思うままに生きた姿を「階級闘争」という視点から描いている。一方、『海賊と資本主義』は海賊を組織として捉え、「必要悪としての海賊組織があったからこそ、資本主義は発展を遂げてきた」と主張する。
 「劣悪な労働条件」におかれた商船の船乗りたちの多くは「餓死したり奴隷扱いされるのはまっぴらごめんだ」という理由で海賊となった。従来の「船長を頂点とする絶対服従の階級社会」に反旗を翻し、反権威主義的で平等主義的な船内運営を行った。
 たとえば、搾取的な賃金制度を改め、まず医者や大工、そして負傷者らに優先的に配分し「残りは人数で割って平等に」分けた。「資本の蓄積プロセスの根幹をなす賃金関係を排し」、海賊は一般社会に先んじて「独自の社会保障制度を創出」したのである。
 レディカーによれば、海賊は「人類共通の敵」ではなく「人類の解放者」であり、「暴君や強欲な輩(やから)を懲らしめ、勇敢に自由を守る者」だった。海賊はフランス革命の先駆者だったのである。
 一方、デュランらがいうには、「資本主義は、境界の曖昧(あいまい)な部分、規格化がまだ進んでいない部分に新しい領域を開拓することで拡大を続け」「国家が規格化を進めれば進めるほど、『規格外』となった者たちは、海賊組織のなかに吸い込まれていく」。
 「激動の時代」にこそ活躍の場がある海賊。デュランらは「バイオ・パイレーツ」や「ハッカー」らが現代の海賊だという。また、海賊は規格化されていないグレーゾーンに出没する。ならば、超高速取引を繰り返す株式市場や労働の解雇特区(案)で一儲(ひともう)けしようとする輩も海賊か。18世紀の海賊が髑髏(どくろ)の旗に込めた「死をものともせず」の気概はありそうもないが。
    ◇
 『黄金』和田光弘ほか訳、ミネルヴァ書房・3780円/『資本』永田千奈訳、阪急コミュニケーションズ・2160円。

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