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宙・有 その音 [著]那珂太郎

[評者]水無田気流(詩人・社会学者)

[掲載]2014年10月26日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■音の磁力に導かれた詩の言葉

 今年6月に亡くなった詩人・那珂太郎の遺作。最後の本になるだろうとつけられた題名の「宙」とは自分の周りの無限を思わせる空間、「有」とはその空間に存在するであろう、多数の多様な物たち。それらを通じ無に帰す宿命の生を描いた、という。
 本書を通読し、あらためて生涯を通じ、その詩論も作品も、音韻やリズムへの傾倒により貫かれた詩人と確信した。詩の言葉や詩作することそのものを先導する「音」の磁力。それは、萩原朔太郎をはじめ多くの先達を読解する際、独自の視点をもたらした。現代詩のほか、評論、追悼文、そして真摯(しんし)な対談の数々には、短詩型の評価と現代詩との差異、さらに双方の可能性についてのエッセンスも盛り込まれている。さらに近年編んだ俳句作品も所収。贅沢(ぜいたく)な本だ。「さゆりてふ名のゆかしさよゆらゆるる」。しみじみ、那珂調の音韻俳句。「春うららいのちあるものみなかなし」。本当に。心より、ご冥福をお祈りする。
    ◇
 花神社・3240円

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