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いとうせいこう 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2014年12月28日

表紙画像

(1)ボラード病(吉村萬壱著、文芸春秋・1512円)
(2)愉楽(閻連科著、谷川毅訳、河出書房新社・3888円)
(3)イチョウ 奇跡の2億年史 生き残った最古の樹木の物語(ピーター・クレイン著、矢野真千子訳、河出書房新社・3780円)
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 (1)は「絆」という名の毒で同調性の強制に向かっている共同体を、小説という別種の毒によって描く傑作。それが寓話(ぐうわ)的に見えるのはむしろフォーカスが異常にぴったりとこの時代に合っているからだろう。正確な視界は異次元的に歪(ゆが)む。
 (2)は中国の圧倒的な筆力を持つ閻連科の長編。フォークナーからラテンアメリカ文学を経て、架空の土地が生み出す奔放な想像力は現在、中国作家の上に降臨していることをまざまざと感じさせる。政治的抑圧を呵々大笑(かかたいしょう)で吹き飛ばすような、爽快な小説だった。
 (3)イチョウという樹木の由来を植物学、考古学、宗教学などなど様々な角度から解き明かす、知的好奇心を刺激される一冊。学問の面白さはやはりこうした越境的な知識にこそある。
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 いとうせいこう(申込者のデータに応じて内容が変わる『親愛なる』を紙の本として限定販売。その後『親愛なる』一般版発売。)

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