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佐々木敦 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2014年12月28日

表紙画像

 (1)音楽談義(保坂和志・湯浅学著、Pヴァイン・1944円)
 (2)私のもらった文学賞(トーマス・ベルンハルト著、池田信雄訳、みすず書房・3456円)
 (3)『ボヴァリー夫人』論(蓮實重彦著、筑摩書房・6912円)
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 (1)は同学年(五六年と五七年生まれ)の小説家と批評家による音楽にかんする対談。ただ互いの想(おも)い出話を喋(しゃべ)っているだけのようでいて、音楽に限らない幾つもの発見と啓発がふと訪れる。気が合うというより息が合うという感じ。七〇年代、八〇年代のメモワールとしても秀逸。(2)は題名通りオーストリアの孤高にして異色の作家ベルンハルトが受賞した複数の文学賞について書いたエッセー(?)を一冊にしたもの。理不尽とさえ思える悪口雑言で有名な彼ならではの皮肉と嫌悪のオンパレードなのに、不思議と読後感は爽やかなのだ。(3)は遂(つい)に完成した蓮實氏のライフワーク。大著だが理路も文章も驚くほど軽やかで瑞々(みずみず)しい。一編の小説を読み終えないことの悦(よろこ)びに満ちている。
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佐々木敦 『「4分33秒」論』『ex-music L』『同R』『あなたは今、この文章を読んでいる。』『ニッポンの音楽』と、5冊も本が出ました。

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