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原武史 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2014年12月28日

表紙画像

 (1)ひみつの王国 評伝 石井桃子(尾崎真理子著、新潮社・2916円)
 (2)人類が永遠に続くのではないとしたら(加藤典洋著、新潮社・2484円)
 (3)少し湿った場所(稲葉真弓著、幻戯書房・2484円)
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 書評の機会を逸した3冊を挙げる。(1)は石井桃子という誰もが一度は読んだことがあるはずの児童文学作家のルーツが埼玉県浦和の氷川女体神社にあることを探り当てた力作。あの氷川の森をまた訪ねてみたくなった。(2)は「加藤良との思い出に」という扉の一文がこの新しい思索の出発点を暗示している。ご子息の事故死をきっかけに、著者の姿勢はさらに低くなり、思考はさらに彼方(かなた)へと跳躍している。(3)は今年8月に逝去した作家のエッセー集。「あとがき」を読むと、この280ページあまりに全人生が凝縮されていることに気づかされる。評者の趣向に応じて暴力的なまでにぶった切る新聞書評という形式自体を、本書は静かに拒絶している。が、最後にどうしても挙げたかった。
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原武史 書評委員のうち委員会に唯一皆勤でした。書評した本が何冊か受賞したのが一番うれしかった。2月に『皇后考』が出ます。

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