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吉岡桂子 書評委員が選ぶ「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2014年12月28日

表紙画像

 (1)食べること 考えること(藤原辰史著、共和国・2592円)
 (2)貧者を喰らう国・増補新版(阿古智子著、新潮選書・1404円)
 (3)どろぼうのどろぼん(斉藤倫著、牡丹靖佳イラスト、福音館書店・1620円)
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 つながりを思いながら繰り返し読んだ3冊。(1)は国家と台所を結んだ『ナチスのキッチン』の著者の初のエッセー集。明治時代の貧民窟から現代のフードコートまで、社会のゆがみと可能性を胃袋で考える。食が持つ力の大きさに、一緒に食べることでうまれるつながりの重さにも気づく。
 (2)は、中国の格差、人権や言論への弾圧を「彼ら」の内に閉じこめない。日本社会とのかかわりを書きおろしたことで、「我々」の問題として響く。
 (3)は、小学校高学年からの児童書だったことを忘れて没頭した。持ち主に忘れ去られた物の「声」が聞こえる泥棒のどろぼん。刑事との珍妙なやりとりにひきこまれつつ、私自身の人や物との距離があれこれ浮かんで涙腺がゆるんだ。
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吉岡桂子 読書を仕事にできた幸せな年! 『東アジアの危機』(講義録・共著)では、環境脅威論から日中関係を考えてみた。

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