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骨相学—能力人間学のアルケオロジー [著]平野亮

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2015年05月03日

[ジャンル]社会

表紙画像

■疑似科学、近代の欧米を席巻

 頭の形を見れば、その人の能力が分かる——。こんな怪しげな主張で19世紀前半のヨーロッパやアメリカを席巻したのが骨相学である。今でこそ疑似科学の典型ともされるが、提唱者らが目指したのは、実証的・合理的に人間の〈能力〉を分析する、最先端科学の構築だった。それゆえ、文豪ゲーテや社会学の祖コントらからも大いに称揚されたのだった。
 そして、骨相学が中心にすえていた「能力(ファカルティ)」の概念は、さまざまに形を変え、現在の能力心理学の中でも生き続けていると著者は指摘する。もっと個性を重視せよ! 生徒の能力にあった教育を! という、一見もっともらしい主張は、一歩間違えれば骨相学のように能力差別の温床ともなりかねない。歴史に学ぶ意義は、同じ轍(てつ)を繰り返さないためにこそあるだろう。
 であればなおのこと、骨相学が人種差別や階級差別に援用された点などについても、もう少し突っ込んだ記述が欲しかった。
    ◇
 世織書房・3456円

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