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村上龍「ラストワルツ」 迫りくる「老い」とかすかな「希望」

評者: / 朝⽇新聞掲載:2015年05月24日
ラストワルツ 著者:村上 龍 出版社:ベストセラーズ ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション

ISBN: 9784584136430
発売⽇:
サイズ: 19cm/204p

ラストワルツ [著] 村上龍

 30年以上続くエッセーシリーズ「すべての男は消耗品である。」の最新刊は、バブルの80年代を懐かしみ(ただし「あの時代がよかった」とは言っていない)、夢を持てない現代の若者に贈る言葉を探し、自らに迫り来る「老い」について語る。「新しい音楽をほとんど聞かなくなった」「わたしも歳(とし)を取ったなと思う」。鮮烈なデビュー以来、疾走し続けてきた(かにみえる)作家から漏れる言葉は本当に「老い」なのか。いや、諦念(ていねん)のようにも聞こえるが。
 「日本のどこを探しても希望のかけらもない」。それでも「解がない時代」に「『ニヒリズム』だけは避けようと思う」と書く。それが、かすかな「希望」となっている。
    ◇
 KKベストセラーズ・1404円