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民主主義ってなんだ? [著]高橋源一郎、SEALDs

[評者]吉岡桂子(本社編集委員)

[掲載]2015年10月04日

[ジャンル]政治

表紙画像

■「私たち」ではなく「私」の言葉

 「憲法守れ」
 「国民なめんな」
 「勝手に決めるな」
 国会議事堂の前で今夏、ずんちゃか鳴ってる太鼓の音にあわせ、安保法案反対をラップする若者の姿が浮かぶ。問いかけの決めゼリフが「民主主義ってなんだ?」。「なんだ!」と返す声はいつしか、「これだ!」に変わった。
 彼らのご両親とたぶん同世代の私が大学生だった1980年代は、ラップはまだ走りで、学生の政治運動は沈没していた。テーマの違いをわきに置けば、あのころの尾崎豊のライブのような「青春」も漂わせながら、時代を創っていく彼らの姿を眺めていた。
 そして、読み始めた。
 安保法案に反対する抗議活動を続けてきた90年代生まれの10〜20代のグループ「自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs〈シールズ〉)」。この本は、中心メンバーの奥田愛基さん、牛田悦正さん、芝田万奈さんと、奥田さんの大学の先生でもある高橋源一郎さんとの対話でできている。
 「私たち」ではなく「私」の言葉が際だつ。前半は、3人の背景を含めて、SEALDsとは何かを語る。その成り立ちから、デモをなぜ始め、どう広げ、広がったかが分かる。安保法案をめぐる社会現象のなかで、重要な一角を占める当事者らの時代の証言である。後半は、古代ギリシャを「ヤバイ」と掘りさげて、民主主義を考える。アテネの丘での高橋先生を囲むゼミみたいだ。
 言葉と行動、自分と他者との相互作用を、先へ進む力の源泉にしている。この本も、共感反感、上から目線にありがた迷惑いろんな意見を誘発するだろう。「日常レベルまで降りてきた」政治の議論にまたひとつ、種をまいた。きっと、続きがあるはずだ。
 聴衆としてきかせていただくより、割って入りたくなる対談本だ。へえ、そうかな、言わせて、きかせてと。
 私の言葉で。
    ◇
 河出書房新社・1296円/たかはし・げんいちろう 51年生まれ。作家・明治学院大学教授。

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