1. HOME
  2. 書評
  3. 「大英帝国の親日派」書評 知恵の輪のような外交

「大英帝国の親日派」書評 知恵の輪のような外交

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2015年11月22日

大英帝国の親日派―なぜ開戦は避けられなかったか [著]アントニー・ベスト

 見落とされがちだが、1941年の日米開戦はもちろん日英開戦でもあった。かつて同盟関係にあった日英が、同盟解消後わずか20年足らずで戦端を開く。歴史研究者ならずとも、副題と同じ疑問をいだくだろう。本書は、チャーチルや開戦時の駐日大使クレーギーのほか、重光葵、吉田茂の日本人2人を含む14人に焦点を当て、おもに1930年代の日本が英国からどう見えていたのかを解析していく。日本を敵(ドイツ)側へ追いやるのか、とどめるために宥和(ゆうわ)するのか。米国の支持を得るにはどうするか。国益をかけた交渉は、知恵の輪のように複雑に絡まり、解けない。一触即発の時代の外交官・政治家の軌跡を追うことができる。
    ◇
 武田知己訳、中公叢書・2376円