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ハイデガー哲学は反ユダヤ主義か [編]ペーター・トラヴニー、中田光雄、齋藤元紀

[評者]杉田敦(政治学者・法政大学教授)

[掲載]2015年11月29日

[ジャンル]人文

表紙画像

■「近代性」への徹底批判だった?

 20世紀最大の哲学者の一人ハイデガーは、「黒ノート」と呼ばれる一連の冊子を遺(のこ)し、全集の最後に刊行するように指示していた。
 それらのノートには、一見して反ユダヤ主義的な記述が複数発見され、ナチスに協力したハイデガーの経歴もあって物議を醸している。
 ノートの編纂(へんさん)にあたったドイツの研究者と日本のハイデガー学者らが集中討議を行った記録が本書である。
 そこでは、ユダヤ人批判のように見えるハイデガーの議論が、実はマルクス主義から「アメリカニズム」まで、「一切を合理的計算のもとに平均化してしまう」ような「近代性」への徹底した批判であった可能性が検討される。
 「反ユダヤ主義」かどうか、という切り口が、かえって哲学に民族を持ち込むことになりかねないとの論点もある。
 それにしても、現に迫害されている少数派を名指しすることが、ハイデガーの議論にとって必要だったのか。それが最大の疑問であろう。
    ◇
 水声社・3240円

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