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柄谷行人 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

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(1)江戸日本の転換点 水田の激増は何をもたらしたか(武井弘一著、NHK出版・1512円)
(2)現代アジアの宗教 社会主義を経た地域を読む(藤本透子編、春風社・4536円)
(3)戦後日本の宗教史 天皇制・祖先崇拝・新宗教(島田裕巳著、筑摩選書・1836円)
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 (1)江戸時代は低成長で持続可能な経済のモデルだと目されている。が、17世紀にはいわば「日本列島改造」がなされた。急激に水田が広がったことが、18世紀に様々な困難をもたらした。それを克服しようとしてできないまま、徳川体制が終わった。ゆえに、江戸時代はむしろ、最初にこのような困難に取り組んだ時代として参照すべきだ。(2)は、旧社会主義国家であった地域の宗教の現在を横断的に考察する。この地域の宗教は様々だが、共通点は、社会主義の時代に伝統的な聖職者・僧侶が廃止されたことだ。宗教が解禁されたのちも伝統的宗教は復活せず、風変わりな「新興宗教」が起こっている。(3)が扱うのも、天皇制—国家神道の支配が解かれた戦後日本の社会に起こった「新興宗教」の歴史である。
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柄谷行人(今年は「Dの研究」を雑誌で連載する傍ら、久しぶりに文学に戻って、『定本 柄谷行人文学論集』(近刊、岩波書店)をまとめた)

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