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島田雅彦 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

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(1)この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた(ルイス・ダートネル著、東郷えりか訳、河出書房新社・2484円)
(2)人体600万年史 上・下(ダニエル・E・リーバーマン著、塩原通緒訳、早川書房・各2376円)
(3)私の恋人(上田岳弘著、新潮社・1296円)
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 戦前回帰主義者の妄言は聞き飽きたので、人工知能、温暖化、火山噴火、テロなどを題材に滅亡に向かう社会に警鐘を鳴らす本ばかり読んでいた一年だった。そんな中で淡々と滅亡後の暮らし方のマニュアルを示した(1)は生活の安全保障を打ち立てる際の手引きとなる。別に国家を頼らなくても、文明は再建できるのだ。(2)も健康と無関係な進化の歩みと未来に向けての身体の「耕し方」を提言している。小説では三十代の若手作家の台頭が目立ち、純文学とSFの融合が進んでいる印象を新たにした。こちらの成果として、(3)をあげておく。科学者や小説家にとっては、三十年後の世界がどうなっているかが問題であって、その想像力が豊かな本はスリリングである。
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 島田雅彦(人格解離の首相とスパイを語り手にした政治風刺小説『虚人の星』と新書『優しいサヨクの復活』を上梓(じょうし))

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