書評・最新書評

市田隆 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

表紙画像

(1)吉村昭 昭和の戦争 全6巻(吉村昭著、新潮社・2484〜2916円)
(2)戦争と読書 水木しげる出征前手記(水木しげる、荒俣宏著、角川新書・864円)
(3)人間のしわざ(青来有一著、集英社・1620円)
    ◇
 戦後70年の節目で、戦争と死を考える本を読み続けた1年でした。(1)は「戦艦武蔵」「陸奥爆沈」など戦史小説の名作の数々を収録した著作集。緻密(ちみつ)な取材、冷静な視点……再読しても、戦争のあるがままをここまで克明に描いた作品群は他にないと思えた。
 (2)は、水木氏が徴兵される直前に残した手記。「人を一塊の土くれにする時代」に哲学、宗教、よりどころを求めてもがく姿に言葉を失った。手記の内容に迫り、当時の青年と読書の関係を分析する荒俣氏の筆が鋭い。必読の書だ。
 (3)は、殺戮(さつりく)と紛争の現場を歩いてきた戦場カメラマンが、どこにも見当たらない救いを求めて苦しむ。そこに光は差すのか。この難題に取り組み、重い読後感を残す。文学の力を感じた。
    ◇
市田隆(文芸誌「小説トリッパー」でコラム「報道の現場から小説を読む」も担当)

関連記事

ページトップへ戻る