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佐倉統 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

表紙画像

(1)地平線の彼方から 人と大地のドキュメント(野町和嘉著、クレヴィス・1620円)
(2)ヘッケルと進化の夢(ファンタジー)(佐藤恵子著、工作舎・3456円)
(3)悲素(ひそ)(帚木蓬生著、新潮社・2160円)
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 書評の機会を逸したものから取り上げる。
 (1)は、最高に美しく力強い写真集だ。世界各地の人々の生活、文化、信仰、を撮りきって、人間の多面性と強さを写し込む。
 (2)は、科学と社会の関係を考えるために必修の温故知新。一元論を強烈にぶち上げ、キリスト教に盾突き、後のドイツ思想にも影響を及ぼした、19世紀の生物学者ヘッケルについての明快で緻密(ちみつ)な評伝。
 科学的専門知識を社会はどのように使いこなすべきかについて、力のこもった主張が読めるのが(3)。4人が死亡した和歌山市のヒ素混入カレー事件を題材にした小説だが、事実関係を丹念に再現して、ほとんどノンフィクションのよう。著者の静かな怒りが、底深く流れていく。
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 佐倉統(2015年3月に同人誌『5』の3・11関連特集号を刊行するも、4月から情報学環長になり執筆どころではない毎日。書評委員会が唯一の憩いの場)

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