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星野智幸 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

表紙画像

(1)悲しみの秘義(若松英輔著、ナナロク社・1728円)
(2)鳥(オ・ジョンヒ著、文茶影訳、段々社・1944円)
(3)残響のハーレム ストリートに生きるムスリムたちの声(中村寛著、共和国・3672円)
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 普遍に到達した言葉は、限りなくシンプルだ。なぜなら、読み手が余白を完成させるから。(1)を読めば、誰もがそこに書かれた言葉に自分の内面を見出(みいだ)すだろうし、自分の言葉を発見するだろう。自分はこんな気持ちで生きていたのか、こんな苦しさを表現したかったのか、と気づくだろう。韓国の極めて大切な作家オ・ジョンヒの代表作である(2)では、親に捨てられた姉弟の世界が、神話のように、深遠で繊細な言葉で描かれる。今の日本の貧困を読むようだが、20年前の作品だ。ニューヨークはハーレム地区のブラック・ムスリムの民族誌である(3)も、神話を記録したかのよう。次々繰り出される未知の生々しい物語に圧倒されながら、でもこれはまさに今私たちが生きている世界なのだと実感させてくれる。
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星野智幸 春に『呪文』を書き上げ、夏にメキシコに3カ月ほど「里帰り」。秋は『呪文』を刊行、冬に路上文学賞開催

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