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蜂飼耳 書評委員が薦める「2015年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2015年12月27日

表紙画像

(1)水死人の帰還(小野正嗣著、文芸春秋・1782円)
(2)忘れられた巨人(カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳、早川書房・2052円)
(3)〈驚異〉の文化史(山中由里子編、名古屋大学出版会・6804円)
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 (1)著者の初期作品を含む6編から成る小説集。大分県南部のリアス式海岸が形作る湾に面した集落「浦」が舞台。海・山・人・獣のせめぎ合う世界だ。躍動感のある文章によって人の暮らしや秘密や希望が切り取られていく。風景が見える。心を動かされた。
 (2)アーサー王伝説の時代を背景とする長編。ブリトン人の老夫婦がいなくなった息子を捜す旅に出る。竜が吐く霧のせいで人々は記憶を失っていく。裏切りと復讐(ふくしゅう)、許し。人の心の複雑さに挑戦する小説。
 (3)イスラームを基礎とする文明圏と西欧文明が共有する部分を、中世を中心に据えて考察した共同研究の著作。「総合知」の在り方の一端を示唆する書。いつの時代も、人間を新たな視野へ導くものは、深い驚きと好奇心。
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 蜂飼耳(10月に詩集を出した。今年はこれに尽きる。タイトルは『顔をあらう水』(思潮社)。ぜひ読んでください)

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