未来政府―プラットフォーム民主主義 [著]ギャビン・ニューサム、リサ・ディッキー/経済学者 日本の最貧困地域に挑む―あいりん改革 3年8カ月の全記録 [著]鈴木亘

[評者]円城塔  (作家)  [掲載]2016年11月27日   [ジャンル]政治 社会 

表紙画像 著者:ギャビン ニューサム、リサ ディッキー、Gavin Newsom、Lisa Dickey、稲継 裕昭、町田 敦夫  出版社:東洋経済新報社

■情報で社会が変わる二つの事例

 情報技術の発達により、日常的に政治の話が目に入るようになってきた。失策が話題となって、多くの人の怒りをかきたてたかと思うと、すぐに別の話題があとへと続く。
 ここに素朴な疑問があって、手軽に情報を発信できるようになったのに、政治があまりよくなっていないように見えるのはどうしてなのか。
 どうも、床屋政談のボリュームをあげるだけでは足りないということらしい。
 ギャビン・ニューサムは前サンフランシスコ市長。情報技術を取り入れ、市政の効率化を図った。
 経済学者の鈴木亘は、橋下徹大阪市長時代、特別顧問として西成特区構想のリーダー役を担った。
 情報技術の最先端をゆく街と、大阪市の貧困地域に重なるところは少なそうに思えたとしても、両市がとった、ホームレス支援や貧困対策の手法には多くの共通点がみつかる。
 ひとつには、人情に頼るのではなく、経済的な原理を利用すること。
 ひとつには、議論の経緯や土台となる情報はネットなども利用して、できる限り公開すること。
 ひとつには、統計だけではなくて、当事者たちの話をじかにきいて歩くこと。同時に当事者たち同士に話し合ってもらうこと。
 人の気持ちはむろん大切だが、多くの意見があるときに議論の決め手とはなりにくい。感情的な反応をよびがちで、なかなか結論にたどりつかない。
 情報の公開は不正防止以外の利点もあって、そのコミュニティに本当に興味を持つ人をひきよせるきっかけとなる。
 意見交換できない相手を人間は信用できない。
 つい忘れられがちだが、自分たちの暮らす場所をよくするためには、自分たちで動いていくしかないのである。他の誰かが勝手に動いてくれる理由がない。
 ではどうやって、という問いに、この二冊の本は実例を示してくれている。
    ◇
 Gavin Newsom カリフォルニア州副知事/Lisa Dickey ライター▽すずき・わたる 学習院大学教授。

この記事に関する関連書籍

未来政府

著者:ギャビン ニューサム、リサ ディッキー、Gavin Newsom、Lisa Dickey、稲継 裕昭、町田 敦夫/ 出版社:東洋経済新報社/ 発売時期: 2016年09月



円城塔  (作家)の他の書評を見る

この記事に関する関連記事

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る

ブック・アサヒ・コム サイトマップ