写真をアートにした男―石原悦郎とツァイト・フォト・サロン [著]粟生田弓

[評者]大竹昭子(作家)  [掲載]2016年11月27日   [ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝 

表紙画像 著者:粟生田 弓  出版社:小学館

 日本初の写真専門ギャラリー、ツァイト・フォト・サロンを創設した石原悦郎の活動録。評伝に留(とど)まらず、写真を巡る環境がどう変化したかがよく取材され、石原のことを知らずとも引き込まれるはずだ。
 絵画専門の画商だったが、三十代で写真に惚(ほ)れ込み、物怖(ものお)じしない性格と達者な仏語を武器にパリに乗り込み、ドアノー、ブレッソン、ブラッサイなどから直接、写真を買い上げた。これだけでも大変なお手柄だが、一九七八年の第一回展にアジェの写真が含まれていたというのにも驚く。
 日本の若手写真家の発掘にも尽力し、元旦早々に北井一夫展をやり、木村伊兵衛や荒木経惟をパリの人脈につなげ、森山大道のピンチを作品を買い上げて助けるなど、絵画の売買で得た資金を投入しては計画を実行していく。根底にあるのは新しい動きが誕生する現場に立ち会いたいという強い思いだ。十代に芸術の根っこを捕まえた者ならではの情熱とブレのなさに圧倒される。

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