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地域分散型エネルギーシステム [監修]植田和弘 [編著]大島堅一・高橋洋

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2016年11月27日

[ジャンル]経済 科学・生物

表紙画像

■新たな電力網、支える形を提示

 表題の「分散型エネルギーシステム」とは、再生可能エネルギーのように、無数の小規模分散型の電源をネットワーク化した、双方向型の電力システムだ。これに対して「集中型電力システム」は、原子力や火力のような大規模集中電源で発電された電気を、大都市圏に送り届ける一方向型の電力システムである。再エネ増大にともなって、電力システムは「集中型」から「分散型」に移行するが、本書はそれを可能にする制度設計、支援政策、新しいビジネスモデルを描く。
 集中型から分散型への大転換を促すのが、「再生可能エネルギー固定価格買取(かいとり)制度」だ。この制度は2012年に日本で導入されて以来、再エネの急速な普及に大きな成功を収めた。だが、分散型システムには課題もある。第一は、再エネを通常の電力よりも高価格で買い取ることによる国民負担の増大だ。第二は、再エネが変動電源であるために、電力の安定供給と両立できるかという課題だ。第三は、分散型システムを支える新しい電力網の構築と、そのための投資費用を、誰がどのように負担すべきかという課題だ。
 これら諸課題に対して本書は、(1)再エネの発電コストは技術革新で継続的に低下し、将来的に既存電源を下回ること、買取制度はそれまでの移行措置であり、費用負担は2030年代に急速に低下することを説得的に示す。さらに、(2)再エネを優先的に電力系統に受け入れ、それを既存電源で補完する電力運用を行えば、安定供給に支障は生じない。最後に、(3)再エネ拡大を支える送電網の増強投資が必要であり、その費用は送電事業者が負担するのが望ましいと結論づける。
 経産省の有識者会議で原発の救済策が検討され、「集中型」への回帰ともみられる動きが露(あら)わになったこのタイミングで、本書が出版された意義は大きい。何のための電力システム改革なのか、本書は原点を改めて想起させてくれる。
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 うえた・かずひろ 京都大学教授/おおしま・けんいち 立命館大学教授/たかはし・ひろし 都留文科大学教授

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