使用人たちが見たホワイトハウス [著]K・A・ブラウワー

[評者]立野純二(本社論説主幹代理)  [掲載]2016年12月11日   [ジャンル]政治 社会 

 欧州の壮麗な宮殿と比べれば、質素というべき国家元首の公館である。装飾は単純で、廊下も狭い。
 それなのに独特な重厚感と華やかさが漂う不思議な空間。それが米国のホワイトハウスである。
 本書には、その秘密が詰まっている。歴代大統領と家族の素顔を知る使用人らの記憶を紡いだものだ。
 恐妻家だったレーガン、誰にも優しかった父ブッシュ、隠しごとの多いクリントン夫妻。ケネディ暗殺や9・11テロの際の動揺は、現代史の断片でもある。
 しかし、この館を格別にしている主役は実は、「借家人」の大統領一家ではなく、世代を超えて重責を果たす無名の使用人らの尊厳であることに気づく。
 多くは奴隷の子孫である黒人だ。国の象徴に忠誠を尽くすことでアメリカンドリームを体現している。
 歓喜で迎えた黒人大統領の時代は来月に去り、新たな主(あるじ)がやってくる。使用人らの目と心に映るものは何か、想像するほかない。



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