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末國善己 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)孤高のハンセン病医師 小笠原登「日記」を読む(藤野豊著、六花出版・1944円)
(2)秋萩の散る(澤田瞳子著、徳間書店・1620円)
(3)スペース金融道(宮内悠介著、河出書房新社・1728円)
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 今年は、ハンセン病患者の強制隔離を定めたらい予防法が廃止されて20年の節目だった。(1)は、国が進めた強制隔離に戦前から一貫して反対した医師・小笠原登の実像を通して、日本のハンセン病政策の非人道性に迫っている。医学的知見と良心に基づき、国策の誤りを指摘した小笠原の姿勢には学ぶところも多い。
 歴史小説の世界では、古代史が静かなブームになっている。(2)はその牽引(けんいん)役による珠玉の短編集。特に地方再生を題材にした「南海の桃李」、失脚した道鏡が最後にたどり着いた境地が感動的な表題作は出色だ。
 債権回収に励む2人組を描く(3)は、SF、ミステリー、経済小説の要素が渾然(こんぜん)一体となっている。コミカルな物語の中に、アクチュアルなテーマを織り込んだ手腕も光る。
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 歴史小説アンソロジー『血闘! 新選組』『刀剣』を編纂(へんさん)。「特選小説」誌上でエロ文学を紹介する連載を始めました

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