書評・最新書評

杉田敦 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)尊厳と身分 憲法的思惟と「日本」という問題(蟻川恒正著、岩波書店・3888円)
(2)在日二世の記憶(小熊英二・高賛侑・高秀美編、集英社新書・1728円)
(3)原節子の真実(石井妙子著、新潮社・1728円)
    ◇
 日本社会を根底から考える手がかりを、紹介できなかった中から。われわれが真に「尊厳」のある「個人」となるためには、単に人であるだけでは足りず、「名誉」を重んじ、自己の責任を鋭く問う反省的な意識を要すると、(1)は指摘する。市民の形成という戦後の課題は未完だ。(2)は話題となった「在日一世の記憶」の続編で、スポーツ、実業などで活躍する人びとの声を集める。「外国人」でも「日本人」でもない「宙吊(ちゅうづ)り」状態を生きた人びとの経験は、戦後日本の「正体」を暴き出す。「国民的女優」の突然の引退をめぐっては、さまざまな風説があったが、(3)が示すのは、経済的理由で芸能界入りし、差別的な業界で必死に稼いだ「職業婦人」の物語である。女性たちの戦いも続く。
    ◇
 あらゆるものが崩壊して行くような不安に駆られる。少数の友人たちと数冊の本だけが支え

関連記事

ページトップへ戻る