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柄谷行人 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)家族システムの起源 1 ユーラシア 上・下(エマニュエル・トッド著、石崎晴己監訳、藤原書店・上4536円、下5184円)
(2)セカンドハンドの時代(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、松本妙子訳、岩波書店・2916円)
(3)世界マヌケ反乱の手引書(松本哉著、筑摩書房・1404円)
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 書評ではトッドの『シャルリとは誰か?』(文春新書)を取り上げたが、私はその後刊行された(1)を推したい。というのも、彼の現状分析の根底に、家族構造を世界史的に考究した本書の認識があるからだ。たとえば、近代的と思われている核家族が人類最古の家族制度であること、また、母系制は父系制が確立した後に反動として生まれたことなど、多くの画期的な考えが提示されている。(2)は、ソ連時代にひどい目にあったが、その後の資本主義の中で再び、別種のひどい状況に置かれた人々の「声」を拾い上げた。もはや出口はないが、人々には苦悩する力がある。それが新たな活路を見いだすことになるだろう。それは日本の社会でも同じだ。(3)はいわば、活路を「マヌケ」に見いだしたのである。
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 今までの仕事(講演集成および坂口安吾論)をまとめ、来年は「Dの研究」を一から書き直す予定

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