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加藤出 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)経済学私小説 <定常>の中の豊かさ(齊藤誠著、日経BP社・2376円)
(2)花の忠臣蔵(野口武彦著、講談社・2376円)
(3)スペース金融道(宮内悠介著、河出書房新社・1728円)
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 書評の機会がなかった本の中から選んでみた。今年は日銀の超金融緩和策の限界が露呈し、構造改革の重要性が再認識された年だった。その点で(1)は、「経済学私小説」という手法を通じて、直視すべき日本経済の問題点を示してくれる。「魔法の杖」を求めたがる風潮を著者は戒めている。
 (2)は、貨幣経済が急拡大した元禄時代の文脈の中で忠臣蔵を捉えなおした意欲作。「松の廊下事件」の原因に、通貨改鋳によるインフレ説を紹介している点は特に興味深い。
 タイトルに惹(ひ)かれ、久しぶりに手にしたSF小説が(3)。新鮮な驚きがあった。SFの近年の進化に不勉強だった、と思わず反省。金融工学を駆使した宇宙版「ナニワ金融道」である。
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 マイナス金利などサプライズ連続で疲労困憊(こんぱい)の1年だったが、書評委員会の議論から知的なビタミンをたくさん頂戴(ちょうだい)しました

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