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蜂飼耳 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)炎と苗木 田中慎弥の掌劇場(田中慎弥著、毎日新聞出版・1620円)
(2)乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽(沖本幸子著、吉川弘文館・1836円)
(3)神話で読みとく古代日本 古事記・日本書紀・風土記(松本直樹著、ちくま新書・950円)
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 (1)著者が得意とする掌編小説、44編を収める。どの一行も、動かしようのない凝縮度を見せ、視線をそらさせない。「自由の首輪」「国益の作家」などのタイトルからも想像できる風刺の、絶妙な味を、力のある文章が支え切る。
 (2)中世に流行した即興的な舞、乱舞。もはや滅びた白拍子、乱拍子などのリズムが、現代に伝わる能の根源〈翁(おきな)〉の成立にいかに関わるかを追究する労作。見えるものを通して、見えなくなったものを考える。
 (3)『古事記』『日本書紀』の神話は、大和王権が、各地で口承されていた神話を利用して創作した政治的な〈神話〉だという視点を推し進め、〈建国神話〉を考察する。国家・地方間の〈神話〉をめぐる攻防と、それがもたらしたものに迫る。
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 9月、詩の仕事で上海の民生現代美術館へ。文化的事業への志と投資の方法から、かつての日本を想像した



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