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保阪正康 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)フランクリン・ローズヴェルト 上・下(ドリス・カーンズ・グッドウィン著、砂村榮利子・山下淑美訳、中央公論新社・各4536円)
(2)密室の戦争(片山厚志ほか著、岩波書店・2484円)
(3)現代語訳 巴里籠城日誌(渡正元著、真野文子訳、松井道昭監修、ヨクトフォリオ・1620円)
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 ローズヴェルトの評伝の中で、この書は二つの特徴をもつ。第1は次世代による評伝であり、第2に客観的分析と主観的解釈のバランスがすぐれていること。読んでいて安心できるのは、ローズヴェルトの能力、性格について信頼できるとの確信のもとに書かれているからであろう。
 片山書はオーストラリアに設けられた日本人捕虜収容所での尋問記録をもとに書かれた。日本兵は「生」への希望をもつと、戦争への疑問と日本社会への不満を語るという。渡書はパリコミューンを目撃した日本の一軍人の記録。冷静な目で歴史の現場を描写していて、なによりパリ市民の興奮、戦い、そして建設などの細部が紹介される。この書に出会えたことで歴史観を変える者もあるだろう。
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 世に変化あれど淡々とした日々、よく原稿を書き、よく講演を続けた。年末に『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房)を上梓

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