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中村和恵 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)野良ビトたちの燃え上がる肖像(木村友祐著、新潮社・1728円)
(2)きみがぼくを見つける(サラ・ボーム著、加藤洋子訳、ポプラ社・1944円)
(3)i アイ(西加奈子著、ポプラ社・1620円)
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 書評しそびれた本から。(1)河川敷に暮らす柳さんらを、野良猫同然の野良ビトと呼び、排除しようとする人々。しかし状況が変われば立場は容易に逆転しうる。敗者は死ねと叫ぶ少年に、日々追いこまれているのは彼自身では、と思う柳さん。暴力の後ろにある怯(おび)えを見すえる目は、弱者ならではの力なのかも。(2)心を閉ざした孤独な男と片目の犬の逃避行。暗い道で小さな灯を一心に見つめているような、忘れがたい印象。犬一匹そばにいれば出口を見いだせる、人間ってそういう生き物でもある。(3)シリア生まれ・日本暮らしの女の子は、紛争や災害による死者の数をノートに記し、自分の居場所を問いつづける。世界の問題を自分のこととして考えるチャンネルを開いてくれる話。
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 ジャッキー・ケイ著『トランペット』(岩波書店)を翻訳。ウェブ平凡と雑誌『世界』の連載は継続中

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