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原武史 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)クレムリン 上・下(キャサリン・メリデール著、松島芳彦訳、白水社・各3132円)
(2)また、桜の国で(須賀しのぶ著、祥伝社・1998円)
(3)狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ(梯久美子著、新潮社・3240円)
    ◇
 今年は女性が書いた本のなかで印象に残るものが多かったが、その中から歴史書と小説と評伝を選んだ。(1)はクレムリンという国家の一地点を対象とするすぐれた通史が、江戸城ないし皇居のような他国の一地点との比較を通して、新たな思想史学を切り開く可能性を秘めていることを教わった。(2)は小説にするには極めて難しいテーマを選んだ著者の挑戦にひかれるとともに、ワルシャワに対する熱い視線に共感した。第2次大戦を日本とは全く異なる視点からとらえているのも印象に残る。(3)は島尾ミホという対象と共振して「狂うひと」にならなければ決して書き得ない評伝。読んでから自問した。これは著者自身が女性だからこそ書けたのか。いや、男性であっても書けたのかと。
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 来年4月からのラジオ講座の収録に明け暮れた。テキストは『日本政治思想史』(近刊)。一般書店で販売されます


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