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星野智幸 書評委員が選んだ「2016年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2016年12月25日

表紙画像

(1)おばちゃんたちのいるところ(松田青子著、中央公論新社・1512円)
(2)かわいい海とかわいくない海 end.(瀬戸夏子著、書肆侃侃房・2052円)
(3)非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か(杉田俊介著、集英社新書・821円)
    ◇
 松田青子さんの小説は闘っている。でも新作の(1)は一見そう見えない。人間も動物も死者も妖怪その他も、みんなごたまぜに生きている。風通しがよくて、この小説世界が楽しすぎて、読んでいることが爽快。
 『キリンの子』が評判となった鳥居さんの短歌に触れて以来、縁遠かった短歌を読むことが多くなった。短歌の波が今来ているのだ。中でも度肝を抜かれたのが(2)。私の短歌の通念を破壊し尽くした。この言葉の氾濫(はんらん)の強烈な批評性は、体験してもらうしかない。
 たいていの男は、男であることをこじらせて恨みを溜(た)めている。それを暴力に向かわせないためには、(3)が必要。女性は最初は嫌悪を覚えるかもしれない。でもこの本を避ければ、差別主義者の激増を黙認することになるだろう。
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 自選作品集『星野智幸コレクション』全4巻を人文書院から刊行。今年はその作業に明け暮れた

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