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シェアリングエコノミー [著]アルン・スンドララジャン

[評者]加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)

[掲載]2017年01月22日

[ジャンル]経済 社会

表紙画像

■資産と消費者結びつける大変化

 「産業革命に匹敵するほどの大きな変化が経済に起きていることは疑いようがない」
 稼働していない資産(自動車や人材など)と、それを利用したい消費者をインターネット上で結びつけるシェアリングエコノミーは、爆発的に拡大している。海外に行くと、冒頭に引用した本書の描写が誇張ではないことが実感される。
 例えば評者は仕事でよく中国に行くのだが、シェアリングエコノミーの普及の速度に驚かされる。他人の自家用車を利用するライドシェアは人々の生活に溶け込んでいる。手が空いている医者に病気の相談をするアプリ「春雨医生」は利用者が9200万人もいる。
 一方、シェアリングエコノミーは、世界中で多くの論争を誘発している。利用者の安全や労働者の権利は保護されているのか? サービスを提供する側に違法な業者が紛れ込んでいないか? レンタル市場が拡大すると商品が売れなくなって景気が悪化するではないか?といった議論である。
 本書は問題点を包括的に整理した貴重な一冊だ。新鮮で刺激的な切り口を提供してくれる。著者はシェアリングエコノミーにも規制は必要と考えている。しかし、「経済のタイプによって規制のアプローチを変える必要があることは、歴史が示している」と指摘する。現在の法律・規制は、経済のデジタル化が進む前の産業や労働形態に合わせて構築されたものだからだ。
 労働環境の悪化を是認しないよう注意が必要だが、発想の転換が広範囲に必要なことが、本書から伝わってくる。政府の経済統計も見直すべきだという。シェアリングエコノミーの拡大で経済の実情が把握できなくなってくるからである。
 「新しいサービスを市場に出す前に公的機関の許可を得るという考え方を捨てるのが望ましい」という考え方も出てくる。イノベーションが起きにくくなっている日本にとって、示唆に富む指摘が多々見られた。
    ◇
 Arun Sundararajan 71年生まれ。ニューヨーク大学教授(ビジネス論)。インド工科大学卒業後、渡米。

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