日本のマラソンはなぜダメになったのか [著]折山淑美

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)  [掲載]2017年01月22日   [ジャンル]人文 社会 

表紙画像 著者:折山 淑美  出版社:文藝春秋

 日本の男子マラソン界は冬の時代が続いている。日本記録は10年以上も更新されていないし、その記録すら世界では70位にも入っていない。かつてお家芸とも呼ばれたマラソンが、なぜここまで凋落(ちょうらく)したのか。本書は宗茂や瀬古利彦ら、日本記録を更新したことのある7人の元ランナーへのインタビューを通して、その理由を探ろうとする。
 多くのランナーが強調しているのが、時代の変化である。幼少期に野山を駆け回るような体験をしなくなり、高度に発達した情報網から逃れられなくなった。つまり先進国に共通する現代の環境が、かえってマラソンの記録を出にくくさせているというのだ。
 瀬古が「マラソンというのは究極のアナログスポーツ」と語るように、どれほど情報網が発達しようが、マラソンでどう勝つかはあくまでも自分自身で考え出さなければならない。そうした思考力の低下もまた影響しているのではないかという読後感が残った。

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