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毛沢東の対日戦犯裁判―中国共産党の思惑と1526名の日本人 [著]大澤武司

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2017年01月29日

[ジャンル]歴史

表紙画像

 第2次世界大戦終結後、中国での日本人戦犯には幾つかのタイプがある。そのうちソ連から中国に移された戦犯969人(撫順組)と中国国内の「罪行重大」逮捕者の136人(太原〈たいげん〉組)をとりあげ、戦犯裁判の実態を分析した書である。1973年生まれの著者は、中国側の文書も精読して、この裁判の歴史的意味を記録している。
 当初は戦犯か捕虜かで抵抗する収容者、親・兄弟を日本軍に斬殺された看守、相互の険悪な関係も、中国側指導者の「寛大」な処理命令で変化していく。説得、教育により日本人戦犯の認罪と告白が始まる。その契機となった一尉官の告白は「私は人間の皮をかぶった鬼」というもので、以後戦犯の多くは「鬼」から「人」になっていったとの描写に次代の確かな姿勢がある。
 一方で著者は、法廷での減刑から釈放への対応に、毛沢東ら指導者の戦略があったと読み抜く。日本に戻った元戦犯らの日中和解史にも目くばりしている。

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