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ぼくのミステリ・クロニクル [著]戸川安宣 [編]空犬太郎

[評者]末國善己(文芸評論家)

[掲載]2017年02月19日

[ジャンル]文芸

表紙画像

 ミステリーファンなら、東京創元社の編集者として数多くの名作を世に出した戸川安宣の名を知らない人はいないのではないか。
 本書は、少年の頃に江戸川乱歩の〈少年探偵団〉シリーズを愛読し、編集者時代には1980年代後半から始まるミステリーブームを牽引(けんいん)、さらにミステリー専門書店の運営と、読む、編む、売るのすべてを経験した戸川の回顧録である。
 中井英夫、都筑道夫、鮎川哲也との交流。翻訳が中心だった東京創元社が、国内ミステリーを出すようになった経緯。北村薫、有栖川有栖、宮部みゆきら人気作家のデビュー秘話など貴重な証言が満載である。
 また、名作のアーカイブだった文庫が単なる廉価本になり、編集作業がデジタル化され、出版不況で刷り部数が減るなど、出版界の変化も捉えており、戦後の出版史としても興味深い。
 全編から戸川のミステリー愛、本作りへの真摯(しんし)な姿勢が伝わってくるので、本が好きなら必読の一冊だ。

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