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竜は動かず―奥羽越列藩同盟顛末(上・下) [著]上田秀人

[評者]市田隆(本社編集委員)

[掲載]2017年02月19日

[ジャンル]歴史 文芸

表紙画像

 人気時代小説家が、幕末の動乱の中で非業の死を遂げた仙台藩士玉虫左太夫に光を当てた。坂本龍馬ら幕末のスターたちに比べて知名度は低いが、この人物が後の世まで生きていたら日本はどうなっていたかと夢想させる歴史小説だ。
 下級武士の玉虫は、出奔した先の江戸で学問の才を認められた。初めて訪米した幕府使節団に加わり、船で世界一周した見聞を『航米日録』に残す。戊辰(ぼしん)戦争では新政府軍に対峙(たいじ)した奥羽越列藩同盟で指導的役割を果たした後、藩内抗争のあおりで切腹させられた。
 著者は、玉虫の渡航場面を史料に基づいて詳細に描いただけでなく、想像力の羽を伸ばし、玉虫と龍馬という東西の開明派が京都で日本の未来を熱く語り合う場面も生み出した。米国体験をもとに「身分ではなく能力で人が用いられる世にしたいと願った」玉虫の高揚と挫折。切れ味良い小説の文体でその魅力がじかに伝わってくる。彼のことがもっと知りたくなった。

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