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復興キュレーション―語りのオーナーシップで作り伝える“くじらまち” [著]加藤幸治

[評者]五十嵐太郎(建築批評家・東北大学教授)

[掲載]2017年03月05日

[ジャンル]社会

表紙画像

 膨大な犠牲者と建物の凄(すさ)まじい破壊が目立つために忘れられがちだが、3・11は地域の文化に多大な被害をもたらした。本書は文化被災の状況に対し、仙台に暮らす民俗学の研究者・学芸員が、ゼミ生らととりくんだ活動の記録だ。最初は震災3カ月後に石巻で着手した文化財レスキューだ。その過程で、災害拠点病院で見た治療優先順位の決め方をヒントに、現場で文化財レスキューカルテを作成したという。次に2012年8月から試みたのが、被災した民具などを展示し、地域住民に生活の記憶を語ってもらうイベント、カフェ、ワークショップである。
 最後に示されるのは、国際的な討議を踏まえた新しい博物館像だ。それはただモノを並べる静的な施設ではない。住民と専門家が対話し、社会関与型の実践をダイナミックに行う文化創造の場だ。本書の問いかけは、今後被災地につくられる博物館にとって重要であるだけでなく、現代美術の動向とも共振するだろう。

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