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覗くモーテル 観察日誌 [著]ゲイ・タリーズ

[評者]武田徹(評論家・ジャーナリスト)

[掲載]2017年03月12日

[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

表紙画像

 覗(のぞ)き穴を作り、モーテル利用客の姿を20年以上も覗き続けた男がいた。本書は彼が記した観察日記を紹介しつつ、著者と希代の覗き魔との交流を描く。
 一読して「ニュージャーナリズム」の時代の産物だと感じた。60〜70年代の米国で隆盛したニュージャーナリズムは〈事件〉の速報より〈人間〉への肉薄にこだわった。覗き魔も、だから許されるというわけではないが、性行為以外の言動も記録し、興味を持った客を尾行して暮らし方を確認している。ニュージャーナリズムの旗手として米国民の性意識の変容を追っていた著者が彼の日記に惹(ひ)かれるのは当然だった。
 著者は覗き魔を「“見ること”の依存症者」と評する。自分や当時のジャーナリズムも意識した言葉だろう。だが諸事情で日記の公刊まで約30年かかる間にニュージャーナリズムは廃れ、社会の至るところに治安用の監視装置が置かれるようになっていた。そんな変化についても考えさせられる。

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