シリア難民―人類に突きつけられた21世紀最悪の難問 [著]パトリック・キングズレー

[評者]立野純二(本社論説主幹代理)  [掲載]2017年03月12日   [ジャンル]政治 社会 

表紙画像 著者:パトリック・キングズレー、藤原 朝子  出版社:ダイヤモンド社

 「人道の危機」が「政治の危機」にすり替えられていないか。大戦後最大の難民問題がいつの間にか、欧米の政治異変として語られている。難民排斥を叫ぶ政治家が報道の主役を占め、当の難民の姿が見えない。
 シリアだけで450万人超が家を追われた。今も無数の人間が、地中海の波間や北アフリカの砂漠、各地の辺境を流浪し、欧州への渡航に命をかけている。
 なぜ子どもを危険にさらしてまで海を渡るのか。人間の大移動に群がるビジネスとは何か。各国政府がとるべき手立てとは——。
 英ガーディアン紙の移民専門記者が3大陸17カ国を歩き、問題を解き明かすのが本書である。ほぼ全編を貫く現場ルポが、逃避行の細い糸にすがるしかなかった難民らの吐息を伝える。
 「シリア人はみんな、自分はもう死んだと思っている」。35歳のシリア人男性はそう語った。退路を断たれた人間の波を止める壁は築けない。日本を含む世界への警告であろう。

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シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問

著者:パトリック・キングズレー、藤原 朝子/ 出版社:ダイヤモンド社/ 発売時期: 2016年11月


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