書評・最新書評

青年の主張 まなざしのメディア史 [著]佐藤卓己

[評者]原武史(放送大学教授・政治思想史)

[掲載]2017年04月02日

[ジャンル]社会

表紙画像

 60年安保闘争や学園紛争など、若年層が注目を集めた事件は少なくない。それらをつなげた戦後史の「語り」も依然として流布している。しかし、表層的な事件を追っているだけでは、戦後史の実像に迫ったことにならない。
 著者が注目したのは、戦後長らくNHKで毎年放映された「青年の主張」という番組である。なるほどそこに、学生運動のような派手さはない。だが若年層の多数を代表していたのが、異議申し立てをする学生よりも、この番組に出た「青年」の方だった時代は確かに存在した。彼らの経歴や演説の内容をつぶさに分析することで、これまでとは違う戦後史の姿が見事に浮かび上がってくるのだ。
 しかもこの番組は、「青年」を見つめる大人たちや全国大会に毎年出席する皇族のまなざしに規定されていた。昭和の終焉(しゅうえん)とともに「青年の主張」が「青春メッセージ」へと番組名を変えたことに「青年」の解体を見る著者の視点が鋭い。

関連記事

ページトップへ戻る