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THE PIVOT―アメリカのアジア・シフト [著]カート・M・キャンベル

[評者]立野純二(本社論説主幹代理)

[掲載]2017年04月16日

[ジャンル]政治

表紙画像

■米国の思考読み解く重要参考書
 
 トランプ米大統領がシリア政権軍を攻撃した。中国国家主席との会食直前に下した異例の命令だった。
 全米メディアの目は瞬時に中国から中東へ移った。太平洋よりも大西洋へと向かう関心の比重は、歴代の米外交の伝統でもある。
 その変革を求めるのが、本書の主眼である。米国の未来はアジアにこそあり、外交を太平洋中心にすべきだ——オバマ政権下の国務省でアジア政策を仕切った著者はそう訴えている。
 「ピボット」は当時のアジア重視策の通称だ。政権は交代したが、ワシントンのアジア政策集団の基本理念は変わらない。日本にとっても米国の思考を読み解く重要参考書となろう。
 旧来の米国のアジア政策は、自国を軸とする「ハブ・アンド・スポーク」型だった。これからは各国同士の協力による「タイヤ」を強化するよう提言する。
 「連邦型アプローチ」と呼ぶ考え方で、同盟・友好国間の連携を促し、各国政府と防衛産業なども巻き込んで統合する。それが米国の負担減と地域の安定の両面で役立つとみている。
 米国が仲介した日韓関係は典型例であり、日本の対アジア安保支援や、豪州・インドとの接近も、そんな米国の思惑に沿うものだ。
 本書が顧みる歴史によれば、米国は一貫してアジアの覇権国の登場を阻んできた。先の大戦で日本、冷戦でソ連を封じたように。
 今世紀の挑戦者は中国である。ピボットで提唱される対処は「安心供与と決意の混合物」だという。
 グローバル経済下、米中は互いを死活的に必要としている。米国の戦略が硬軟両様なのは必然だろう。
 むしろ問うべきは、米国に従う以外に原則を持てない日本外交だ。根拠の乏しい武力行使にも即座に寄り添う安倍首相の姿に、普遍的な理念は見えない。
 トランプ流のニクソン・ショック再来も語られる昨今、日本に必要なのは、米国とアジアを俯瞰(ふかん)し、自ら東方戦略を描く構想力だ。
    ◇
 Kurt M.Campbell 57年生まれ。米オバマ政権1期目の2009〜13年に国務次官補(東アジア・太平洋担当)。

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