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ロボットの歴史を作ったロボット100 [著]アナ・マトロニック

[評者]佐倉統(東京大学大学院情報学環長・科学技術社会論)

[掲載]2017年04月23日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■問題知る手がかり、空想世界に

 ロボット博物誌のバイブルだ。科学や技術について考える際には想像力が必須だということを、改めて思い知らせてくれる。
 タイトルのとおり、ロボットが次から次へと出てくる。最初の4分の3は架空(フィクション)の、最後の4分の1は実在(リアル)のものたち。どちらもアメリカとヨーロッパを中心としつつ、日本や中国など、非西洋地域にも目配りが行き届いている。
 一方で、産業用ロボットやインターネットの検索を手助けしてくれる人工知能など、いわば「地味な」ロボットは取り上げられていない。ちょっと残念だ。
 《スター・ウォーズ》からパロまで、この本で紹介されているロボットたちを眺めていると、古代からの人間の想像力のたくましさに畏(おそ)れ入る。実在ロボットの多くは空想世界の同朋(どうほう)たちに、とてもよく似ているのだ。不気味なほどに。
 だが、考えてみれば、空想のロボットも実際のそれも、どちらも私たち人間の想像力が具現化したものである。似ていて当然なのだ。
 そしてだからこそ、著者が主張しているように、空想の世界を知ることは、現実の世界でこれから何が問題になるかを考える手がかりになる。昨今、ロボットや人工知能が普及すると社会はどうなるか、議論や憶測がかまびすしいが、古(いにしえ)から今に至るまで、SFやアニメは、ロボットに関する倫理的・社会的考察の宝庫なのである。
 どこから読んでも良さそうな構成ではあるが、配列には著者の工夫と思いが込められているので、頭から通読していくことをお薦めする。読み進めていくと、ぼくたち人類が、長きにわたってフル回転してきたこの想像力を、ロボットが超えることはできないだろうと確信できる。
 原題は「ロボットによる人間の乗っ取り」を意味する“Robot Takeover”。このペシミズムを解毒してしまった邦題はいただけない。訳文がこなれていて読みやすいだけに残念だ。
    ◇
 Ana Matronic ミュージシャン、映像アーティスト。BBCラジオ2でロボット番組を担当。

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