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オレたちのプロ野球ニュース-野球報道に革命を起こした者たち [著]長谷川晶一

[評者]サンキュータツオ(お笑い芸人、日本語学者)

[掲載]2017年04月30日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■「語りの文化」本気で作った情熱

 本も面白いが、それを読んだ人の感想も面白い。テレビも面白いが、昨日の番組はああだったと語らう「テレビ語り」も面白い。野球も面白いが、あの一球がどうだとかと語らう「野球語り」も面白い。「野球語り」を観(み)るのも面白い。そんなテレビ語り、野球語りの文化が詰まったテレビ番組が『プロ野球ニュース』だ。
 試合のなかでどのプレーが勝敗を分けたか、選手や監督の意図はなにか。元選手の解説者たちが微に入り細に入り説明、オフシーズンもバラエティーに富んだ企画で野球選手の別の顔に迫る。1976年から01年までフジテレビの23時台を背負い続け(現在はCSで放送中)、野球の報道の在り方に革命を起こした『プロ野球ニュース』。本書はこの番組をなぜ、そしてどうして作ることができたのか、プロデューサーから、ディレクター、カメラマン、アナウンサー、アルバイトに至るまで、番組関係者に徹底取材した、熱いドキュメントである。著者は『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』(集英社)も力作だった長谷川晶一氏。
 アナウンサーではない元野球選手の佐々木信也が司会をつとめる異例の番組となった背景。ネット局の協力を得て、パ・リーグの試合も含め全試合を徹底解説ができた理由。試合を無音で撮影するのが当たり前だった時代に、球場の音を拾うことに苦心したカメラマン。ビデオテープではなくフィルムで撮影していた時代に、試合終了から本番までになんとかする「編集の神様」の存在……。いかにして当日の試合をその日のうちに臨場感たっぷりに伝えるか。テレビマンたちが情熱を燃やしていた時代。人は本気でテレビを作っていたし、テレビを見ていた。ひとつの番組を語ることで、気づくとテレビ史全体が見えてくる。
 そして本書を読んだ人と、この本について語りたい。
    ◇
 はせがわ・しょういち 70年生まれ。出版社勤務を経てノンフィクションライター。著書に『極貧球団』など。

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