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そろそろ、部活のこれからを話しませんか-未来のための部活講義 [著]中澤篤史

[評者]斎藤美奈子(文芸評論家)

[掲載]2017年04月30日

[ジャンル]教育 社会

表紙画像

■見過ごされてきた負の側面

 中高生時代の思い出は部活だっていう人、多いですよね。しかし、よく考えると不思議。正式な教科でもない「課外」活動なのに、教育基本法や学校教育法の規定もないのに、なぜ部活動は成立してるの?
 『そろそろ、部活のこれからを話しませんか』というタイトル通り、本書は特に体育会系部活動の過去と現在と未来を考え直した啓発と提言の書だ。
 明治期の東大からはじまり、旧制高校や旧制中学へと広がったのが部活のルーツ。野球、テニス、水泳など各種競技の全国大会ができ、オリンピック選手らトップアスリートも育ち、昭和初期には学校文化の一部として部活は定着した。
 戦後の部活はしかし、民主主義教育とのすり合わせで、右往左往することになる。すべての生徒に平等にスポーツをという名目で全員加入を義務づけた必修クラブの時代(70年代)。非行防止策としての役割が管理主義につながった校内暴力の時代(80年代)。
 生徒の「自主性」を重んじる。それが部活のタテマエだが、〈部活の現実は、必ずしも「自主性」に満ちているわけではない〉と著者はいう。厳しい運動部への入部を強制される生徒。いきなり顧問を任され、過労死ラインの時間外労働に悲鳴を上げる教師。
 部活が楽しかったという人ほど負の側面には気づきにくい。思えば部活は死の危険すら秘めているのだ。大阪の高校のバスケットボール部員が体罰に悩み自ら命を絶った事件。栃木県の高校の登山部員ら8人がなだれで死亡した事故。
 喫緊の課題として本書が主張するのは「死亡事故や体罰・暴力から生徒の生命を守ること」と「苛酷(かこく)な勤務状況から教師の生活を守ること」の2点である。
 中学生の9割、高校生の7割が部活に加入し(運動部は中学生7割、高校生5割)、中高の教師の9割が部活の顧問を務めている今日、これは大人も含めたみんなの問題なのだ。
    ◇
 なかざわ・あつし 79年生まれ。早稲田大学准教授(スポーツ科学・社会福祉学)。『運動部活動の戦後と現在』。

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