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アメリカ帝国の終焉-勃興するアジアと多極化世界 [著]進藤榮一

[評者]諸富徹(京都大学教授・経済学)

[掲載]2017年04月30日

[ジャンル]政治 社会

表紙画像

■中心軸の移動、不可避的に進行

 トランプ政権の誕生や、英国のEU離脱など、常識を覆す投票結果に我々は驚き、世界で何か大きな地殻変動が起きつつあると気づかされた。だが、まだ新しい国際秩序は見えていない。本書は、歴史の中に現在を位置づけ、空間軸を大きくアジアにとって日米関係を相対化することで、国際秩序の根本変化に目を向けるよう誘ってくれる。
 本書によれば、米国の衰退は不可避的に進行中だ。それはどの政権であっても覆せない。ローズベルト大統領のニューディール政策は、かつてインフラ整備で米国を世界一のものづくり大国へ押し上げ、独占を打破し、労働者保護や社会保障の導入により中間層を形成し、豊かな国内市場の創出に成功した。だがいまやオバマ政権ですら、金融によるアメリカ経済支配を打破できず、ものづくり衰退はさらに進み、税制と医療保険の改革も不十分なまま格差は広がった。軍事に対して不釣り合いなまでに貴重な資源を割くアメリカ経済の体質もまた、その体力を奪っていく。
 これに対してアジアはどうか。いまや世界のものづくりの中心は、中国を中心とする東アジアと東南アジアに移行した。これら諸国では先進国をはるかに上回る成長が続き、所得水準の上昇で中間層が急速に膨らみつつある。巨大な「世界の工場=市場」がアジアに生まれ、貿易と直接投資を通じて相互依存が深化している。事実上の「アジア生産通商共同体」が形成され、インド・バングラデシュといった南アジアも巻き込みつつ拡大している。
 我々がいま目にしているのは「資本主義の終焉(しゅうえん)」などではなく、欧米からアジアに資本主義の中心軸が移動する歴史的大転換だというのが、本書の中核的主張だ。日本経済の将来を、中国との対抗関係の中に置くのか、それとも興隆するアジア生産通商共同体に置くのか、改めてそのデザインを再考すべきとの本書のメッセージは傾聴に値する。
    ◇
 しんどう・えいいち 39年生まれ。筑波大学名誉教授(国際政治経済学)。『現代アメリカ外交序説』など。



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